５月のロワゾー・ド・リヨン

通勤経路が上野経由から飯田橋経由に変わったせいで、ずっと上野のロワゾー・ド・リヨンに寄れないでいた。（いや飯田橋にもいい店はあるのだが・・・）
が、やはりこの店は、毎月の新作のチェックを欠かすべからざる店だと再認識させられた。

まずはシュー・リヨネーズ、これは定番商品ながら今回初めて食べた。なぜってけんちゃんは、紅茶の香りが嫌いなのだ。 なので嫁は喫茶店でも紅茶が飲みたいところをぐっとこらえ、紅茶系の味のケーキやプリンの類は買ってもらえず涙を飲み続けている。旦那抜きで買い物するこ の機会に買わずにいつ買うのだ。
刻んだアーモンドを散らして焼いた皮は、適度にパリパリ。クリームで湿気きってふにゃふにゃなどということはない。だが嫁の好みとしては、もう少し強めに 焼きを入れ、カリっとした歯ごたえとともに焦げたナッツの香ばしさが欲しいのも事実。紅茶のクリームは申し分ない。主張しすぎない品のいい紅茶の香り、 たっぷりとした量。シュー自体のサイズも大きすぎず小さすぎず、全てにおいて実にバランスのいいシュー。・・・けれどやっぱり、けんちゃんは見向きもしな い。いっそ哀れな奴。
嫁は９月にけんちゃんを日本に置き去りで渡仏する予定だが、日程表にはリヨン２泊を確保してある。是非現地で、このシュー・リヨネーズを食べてみたいものだ。

まさか５月の末にもう登場するとは思っていなかった、桃のケーキ「ペーシュ・ミニョン」。 今までに食べてきた同じ名前のケーキとは随分違う形状だけれど、きっと桃の味なんだろうと思い買ってみる。桃と聞いて一瞬飛びつきかけた岡山出身のけん ちゃんだが、ケーキの姿を一目見て、苺に宗旨替えした。それはきっと自分の求める桃ではない。彼のその直感は見事に当たっていたのだが。
桃の味というのは、そもそも非常に繊細なものである。ちなみにここけんちゃんちで語られる桃とは、岡山産の白桃のことである。水蜜桃ともいわれるかの白桃 は水分たっぷりで実にジューシー、高い糖度を持ちつつも儚く繊細なあの甘み。あれを想像してケーキ食うなと言われればそれまでだが、やはりペーシュ・ミ ニョンと呼ばれるケーキは、例えば千葉・谷津のル・パティシエ・ヨコヤマのそれをベンチマークとしたいが、タルトあるいはパイやケーキでこしらえた台の上 に半割りまたは丸ごと１個の桃（生であったりコンポートであったり）が乗り、割ると中からクレーム・パティシエールなどが出てくるあのタイプをベストとし たい。
前置きが非常に長くなったが、要するにそういったペーシ・ミニョンとは全くの別物ということである。桃の果実の歯ざわりは、真ん中のルビーレッドのジュレ の層と一番上のピンクのムースの間、３ミリ程度の厚さのスライスがサンドしてあるのみ。そしてムースの味は、ムースとしてはちゃんと美味しいが、桃として はどうだろう？もう少し桃の風味が欲しい、桃の風味を求めて食べるとかなり物足らないペーシュ・ミニョンであった。

そして今回の真打、フレーズ・ナントカである。単語３つ程度の長い名前であったのだが、レシートに表示されるだろうと思って名前を暗記せず、後になってレシートを確認したら「ケーキ」としか記載がなかったのだ。しょんぼり。
けんちゃんは勿論苺ショートが大好きで、苺ショートというからにはふわふわのジェノワーズがなければいかんと思っており、当然このような形状のケーキは苺であってもあまり好まない。
のだが。
このケーキはかなりのお気に入りとなった。苺ショートの重要なパーツである生クリーム、あのミルキーな味は、２段の白い層がしっかりと代役を果たしてい る。とろりとした苺のジュレも、酸味と甘味のバランスが絶妙で、生の苺自体がサンドされていなくても十分に苺っぽさをアピールしている。嫁は底部に混ぜ込 まれたフィヤンティーヌのザクザクとした食感がかなり気に入った。味はもう完璧に、通好み（？）なガトー・フレーズだ。今シーズン最高の苺ケーキの称号を贈りたい。

やはりこの店のケーキは、どれも大抵外れがない。今回ペーシュ・ミニョンは惜しかったが、桃と思って食べなければかなり美味しいアントルメだし。（電車で持ち帰って冷蔵庫に入れずそのまま食べたので、ムースが解けて味が変わってしまったというのもありだ）